1. 博物館学・文化人類学への招待  文学研究科教授 佐々木亨

■博物館学コース

歴史系博物館、美術館のほか、動物園、科学館などすべてのミュージアムが研究対象

「博物館学」と聞いて、具体的な内容をイメージできるでしょうか。

ひとことで言えば、ミュージアムを運営していくにあたり必要なスキルやスタッフが共有すべき考え方やミュージアムのあるべき姿、あるいはミュージアムやそのコレクションの歴史などを研究する学問分野です。

文学部・文学研究科にある講座ですので、ここで研究対象とするミュージアムは歴史系博物館や美術館と思われがちですが、そうではありません。水族館、動物園、植物園、企業博物館、科学館などすべてのミュージアムにおいて研究が可能です。

例えば、2015年度大学院修了生は「博物館における外部性の評価に関する研究」、「公立博物館の自己評価に関する研究」「ユニバーシティ・ミュージアムの経営実態に関する博物館的研究」「企業博物館における公共的価値と経済活動の背反性解消に関する研究」「博物館におけるボランティアの意識に関する研究」などのテーマで修士論文を書きました。

 

▼学芸員資格~ミュージアムの活動に必須の資格を取得する~

学芸員とは、ミュージアムに勤める専門スタッフのことです。展示や教育プログラムを企画・実施し、コレクション(または動植物)を収集・保存・育成したり、研究したりします。いわばミュージアムを演出する黒子のような存在です。私もかつて、北海道立北方民族博物館(網走市)で、文化人類学の視点から北方先住民文化を紹介する学芸員として勤務していました。

学芸員資格を取得するためには、博物館概論や展示論、資料論、博物館実習などの9科目を履修します。私もこれらの科目の一部を担当しています。北大生であれば、文系・理系を問わず、すべての学部生(2年生から)・大学院生が資格取得のための科目を受講できます。

 

 

■文化人類学コース

現地に滞在、人との交流などフィールドワークに基づく調査研究

当講座の文化人類学は長い歴史があり、1966年に文学部に設置された北方文化研究施設を前身としています。1995年の組織改編によって、この施設は文学部北方文化論講座となり、文化人類学・考古学・民族言語学の三分野を総合する講座としてスタートし、のちに博物館学が加わり四分野となりました。

北方文化研究施設当時から引き継がれている伝統は、「フィールドワーク」にもとづく調査研究を進めていることです。文化人類学は、文化を通して、人と人との関係性を明らかにする学問です。そのため、研究対象とする地域に長期間滞在し、地域の人びとと良好な関係を築きながら、一緒に日常生活に参加したり、ハレの行事に係わったりしながら、人びとの行動を観察し、考えを聞き取りしていきます。

例えば、大学院生の研究テーマでは、「豪雪過疎地域における自助共助」、「中国朝鮮族におけるシャーマニズム的現象」、「北海道平取町におけるアイヌ古式舞踊とその認識」「補完代替医療における人類学的研究」などがあります。いずれも、地域やそこに住む人々との関わりをもとに研究を行っています。

また、人と動物の関わりについて研究している大学院生もいます。「江戸時代におけるツル類と人との関わり」、「エゾオオカミをめぐる歴史と文化」などです。これらの研究では、全国の図書館などをフィールドとして、さまざまな文献資料を渉猟しています。

 

○授業の例○

北方人類学演習  フィールドワーク実践

ここでは、文化人類学において大切な「フィールドワーク」や「調査」における基本的技術についての講義・演習を行います。(詳しくは北海道大学ホームページのシラバスを参照)

文学部だけでなく、他の学部生、または院生と一緒に計画を作りフィールドワークを行います。椅子にずっと座り講義を聴くのではなく、自分たちが話し合い、教室の外での活動もあるアクティブな講義となっています。

 

 

 

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